2004.6.2(水)
イングリッシュ・ローズで物語T
「テス・オブ・ザ・ダーバーヴィルズ」
イギリスの作家トーマス・ハーディの作品「テス・オブ・ザ・ダーバーヴィルズ」邦題は「テス」
の美しい主人公にちなんで名付けられました。英国のデビット・オースチン氏により、1998年
に作出された薔薇です。明るいクリムゾン・カラーでディープカップ咲き。ほのかに香ります。
<テス・オブ・ザ・ダーバーヴィルズ>ア・ピュア・ウーマン Tess of the d'Urbervilles “A Pure Woman” 「ダーバービル家のテス」 トマス・ハーディ 1891年 五月も末のある夕方。貧しい行商人ジャック・ダービフィールドは、マアロット村への帰り道に出会った牧師より、 実は没落した名家ダーバーヴィルズ家の末裔だと告げられる。有頂天になったジャックは、馬車を調達して家へ 帰る。 飲んだくれた父親の代わりに、蜜蜂の巣箱をキャスタブリッジの問屋に届ける為、テスは夜明け前に出発する。 荷車の上でつい眠ってしまったテスが衝撃で目を覚ますと、郵便馬車に衝突して息も絶え絶えになった可哀相 な老馬の姿があった。 父親は病気持ちでのらくろ、母親は小さな妹や弟を抱えていた。生活のための唯一の手段を失ったのは自分 のせいだと、テスはトラントリッヂに住む新たに遠い親戚となったと信じた家に働きに出るのだった。 しかし、テスの美しさに惹かれた当主の跡取息子アレク・ダーバーヴィルズに欺かれ、森の奥深く連れ込まれて 辱めを受けたテスは、再び家に逃げ帰ることに。やがて男の子を産むが、病で亡くしてしまう。 絶望状態から抜け出すように、テスはタルビセイズの搾乳場へ雇われていったが、そこで、かつてマアロット村を 徒歩旅行者として立ち寄った若者と出会う。牧師の息子ではあったけれど、牧場経営を夢見て搾乳の仕事を学ん でいたエンジェル・クレアであった。 惹かれあう二人であったが、自分は穢れのない純真な乙女ではない、クレアに相応しくはないのだと、テスは悩み 苦しむ。結婚を強く望むクレアに、ついに承諾してしまう。過去を打ち明けることが出来ないまま、結婚当日を迎えて しまった。テスが、やっとの思いで話すことが出来たのは、その夜であった。 かなり自由な考えを持っていたクレアであったが、穢れた女という偏見から逃れられず、テスを一人残してブラジ ルに発ってしまう。テスの為に、一人で暮らすには充分な金額が残されていたにもかかわらず、困窮する実家を救 う為、それも使い果たしてしまう。 再びテスは、さらに過酷な仕事に就く。やがて母親が病に倒れ、ついには父親が亡くなってしまう。その間にも、 テスを見つけたアレク・ダーバーヴィルズが、テスに言い寄る。私はクレアの妻だと突っぱねるテスに、それなら何故 このような重労働に身を費やすのかと問うアレク。あなたの身勝手がすべての原因だと怒りをぶつけるのだった。 父親が亡くなり土地の耕作権を失ったテス達は、やがて住み慣れた家を追われてしまう。 一方、ブラジルに渡ったクレアであったが、慣れない気候に身体を壊し病に伏していた。何とか健康を取り戻した クレアは、テスから届く悲痛な手紙に心を動かされる。イギリスに帰ってきたクレアは、テスを探しまわるが、行方は 分からなかった。 ようやく探し当てた時、すでに、テスは嫌い憎んでいたアレクの庇護の元にいた。もう来ないで欲しいと言われた クレアは、自分が悪かったと後悔したが、時はすでに遅かった。 戻るために汽車を待つエンジェルの目に、テスがやってくるのが見えた。アレクを殺して出てきたのだと、だから 私のあなたへの罪は許されるのだと訴える。 二人だけの時間を過ごしながら行き着いたところは、異教の神の地ストーン・ヘンジであった。「過ぎたことなど考え ないで。今より他のことなんか考えません。明日はどうなるのか誰にも分からないのだから。」すべてのしがらみから 開放されて幸せに眠るテスに、やがて捕り手が迫る。 西の丘に登ったクレアとテスの妹リザ・リューは、じっと赤煉瓦の建物を見つめていた。やがて、塔の竿に黒い旗 が登る。テスの処刑執行の標であった。 |